だいぶ前に新潮文庫の「質屋の女房」を買って、その中のブラブラする学生シリーズ的な少しおかしみのある短編が好きで、続けてこの本を買ったまま、そのまま放置すること約1年。

んで、読んでみたのですが「海辺の光景」は凄く良い話だなぁ、と思ったのですが、ほかの短編が意外にダークでびっくりした。

「宿題」とか勉強やらなきゃやらなきゃって思ったまま、数か月学校行くふりして青山墓地にばっくれてしまう話ですが、その切羽詰まった感じがやたら胸に来る。

あとは、強盗するためにレインコートの内側にナタぶら下げたまま徘徊する「雨」とか。

などなど「あれ、そういう感じなのかぁ」と、読んだ。

「サンクチュアリ」を3回チャレンジして全て途中で挫折した時に、なんか翻訳にも苦手意識あったし、もうフォークナーって人のは読めない、と思っていたんだけど、この「八月の光」は装丁も格好良かったのもあり「よしもっかいがんばってみよう」と思って買ってみた。

何が面白かったかは正直文章にしづらいけれど、超極所的読み方しかできない僕は、やっぱり文章がいちいち格好良いとそれだけで読める。あとは読んでいると、この30年代の小説がその後の小説や映画など、今の自分の周りにあるものに結構影響を与えているんじゃないかって気がする、というのも読んでいく時の持続力に繋がった。

話としては単純なストーリーなんだけど、登場人物の過去にどんどん遡るから、それは600ページ越えてしまいます。はい。

メインのジョー・クリスマスは、アメリカ大陸を彷徨うと同時に自分が黒人なのか白人なのか苦悩しつつ人生を彷徨い、最後は自分のルーツから逃げられないことを悟り(諦め?)、結果として殺されてしまう。(殺され方も半端ない。。)

しかも殺したのがグリムという偏った思想の危険極まりない男という、このギャップが僕には印象に残っている。これは先日の鈴木先生の最終回にも僕の中では繋がってる。

最後のリーナ・グローブによる締めは、圧倒的なさわやかさでもって、アッパーな読後感を僕にもたらしたけど、よく言われる彼女こそが主人公だっていう意見には、ちょっと違和感。(でも作者もそう言ってるらしいけどね。)だってすげーキャラが違うんだもん、ほかの登場人物と。

今年入ってから一番面白かったかなー。また読みたい。

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